ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ ソロアドベンチャー テンプル編
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NM さて、ニンジャの作成は終わったかな?
プレイヤーA あいよ。これだ。
PC−A『リヴィッドヤイバ(Livid yaiba)』
カラテ:4 ニューロン:4 ワザマエ:5 ジツ:0
体力:4 精神力:4 脚力:3(4) イニシアチブ:4 回避ダイス:5(6)
サイバネ:ヒキャク(脚力+1、回避ダイス+1個)
所持品:ショートナギナタ(カタナ相当)
※ノーカラテ・ノーニンジャ適用
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プレイヤーA 脚をサイバネ化したイアイド使いの『リヴィッドヤイバ』だ。『ノーカラテ・ノーニンジャ』で能力値を伸ばして、何とか見られるようになったって感じか。
NM まあ、まずまずじゃないかね。所持品はショートナギナタか。短い薙刀……。どのくらいの長さかな?
プレイヤーA 片手で使い易い長さじゃないとならない訳だし……。そうだな。室内ホウキくらいの長さでイメージしている。
元々は『ノダチ』って設定だったんだが、ノダチが『大型武器』としてルール化されちゃったからな。急遽設定を変更したんだ。
NM 成る程ね。まあ、サイズについてはオッケー。明確なイメージがあると分かり易くて良いね。
今回やるのは、2019年2月6日にツイッター上で開催された公式ソロアドベンチャーその2のシナリオだ。
じゃあ早速、セッションを始めようか。宜しくお願いします。
プレイヤーA 宜しくお願いします。
ホーリースマイト・オブ・ブッダ・テンプル。
高層ビルの屋上に建立された、古く由緒正しい寺院。
屋上に上がったリヴィッドヤイバは物陰に身を隠し、様子を窺っていた。
本堂に安置されているマキモノ……ミヤモト・マサシの記した兵法書のフラグメントを奪取する事。それがリヴィッドヤイバに与えられた任務である。
この任務には追記事項があった。
『殺しは最低限にせよ』
後処理を厭う意向によって追記されたこの制限を、リヴィッドヤイバはむしろ好ましく思った。
「良かろう。ならば、某がそこらの粗暴なサンシタではないという事を見せてやろうではないか」
リヴィッドヤイバは自惚れの強いニンジャであった。
自身の定義する『そこらのサンシタ』と同じ振る舞いを非常に嫌う。そして、慇懃な態度で上辺を繕い傑人ぶる事を好む。
今回の任務において非暴力の方針を固めたのも、道徳心などでは決してなく、自分本位な虚栄心によるものであった。
NM さて、任務の為に、リヴィッドヤイバは本堂に忍び込まないとならない。
しかし、入り口には警報装置に加え、サイバネアイと聖職者用拳銃を装備したサイバーボンズが見張りに立っている。これらのセキュリティを掻い潜る必要があるね。
プレイヤーA→リヴィッドヤイバ 随分とまあ剣呑なお寺さんなものだ。気付かれない様に忍び込む事は出来るか?
NM ニンジャの身体能力にものを言わせて忍び込むならワザマエ、警報装置をハッキングするならニューロン。どっちも目標値4で判定だよ。
リヴィッドヤイバ オッケー。まあ、高い方でやるよな。ワザマエで[N:11235]1個だが成功だ。
NM 了解。では、リヴィッドヤイバは問題無く本堂に忍び込んだ。
「フン、所詮隙だらけのモータル。実際フリーパスだ」
警備を掻い潜り本堂に入り込んだリヴィッドヤイバは一旦物陰に隠れ、周りに気配が無い事を確認し、姿を現した。
スマートなフォルムの、霞んだ鉛色をしたニンジャ装束。その脚部はメタリックなサイバネ脚に置き換わっている。
薄暗く静寂の包む無人の廊下。リヴィッドヤイバはサイバネを精密に駆動させ、音も無く悠然と歩き進んだ。
NM じゃあ次のシーンに行こうか。いよいよ、ターゲットの位置する場所へと突入だ。
本堂の内部が見える位置まで近付くと、リヴィッドヤイバは一旦足を止めて再び物陰に身を潜めた。そして、注意深く内部の様子を覗き込み、様子を窺う。
そこには何百本ものローソクが灯り、奥には大きなブッダ像が鎮座する。
リヴィッドヤイバは一瞬、その視線に射竦められ自身の行いを咎められた様な錯覚を覚えたが、すぐに気を取り直した。
物言わぬブッダの像など恐れるに及ばず。そう、念の為にセキュリティを警戒しただけだ。
リヴィッドヤイバは胸中で独り言ちる。
実際、問題はそんな所ではなかった。リヴィッドヤイバは視線を落とし、ブッダ像の前にある棚を注視する。
大量のマキモノが安置された棚。……一体、どれがターゲットなのか。見当も付かない。
NM ブッダ像の前に、大量のマキモノが納められた棚。さらにその前で、住職がモクギョを叩きながら念仏を唱え、その横ではミコー・プリエステスが祈りを捧げている。
リヴィッドヤイバ 見付からない様に、マキモノを1つ1つ吟味してターゲットを探すって事は……。
NM まあ不可能でしょ。いくらニンジャ野伏力を駆使したとしても、眼前でそんな悠長な作業をされたら誰だって気付くよ。
幸い、ここは奥まっているので警備ボンズがすぐに異常に気付く事は無い。住職にインタビューして、ターゲットのマキモノを聞き出すのが一番手っ取り早いと判断するだろう。
リヴィッドヤイバは溜息をつかんばかりの気分であった。
せっかくここまで、スマートかつ完璧に任務を進めて来たというのに、結局は暴力頼みになってしまうのか。
リヴィッドヤイバは自惚れの強いニンジャだ。
自身の仕事の出来栄えが、最終的にそこいらのサンシタと変わらぬものになってしまう。それはリヴィッドヤイバのモチベーションを大きく削ぐ展望であった。
とは言え任務だ。やり遂げなければサンシタどころの話ではない。リヴィッドヤイバは気持ちを切り替え、住職とミコーの前へと、姿を現した。
リヴィッドヤイバ じゃあ、その手っ取り早い手段を取るか。住職とミコーの前に、姿を現してアイサツをしよう。
NM 了解。目の前に現れたリヴィッドヤイバの姿を見て、住職とミコーはニンジャ・リアリティ・ショックを起こし、恐怖に震える。
あと一押しの恐怖を与える事で、住職はニンジャに屈服し、マキモノを差し出す事だろう。
「ドーモ、某の名はリヴィッドヤイバです。ミヤモト・マサシの兵法書、頂きに来ました」
両手先を腰に当て肘を張った直立姿勢から、重々しくオジギ。リヴィッドヤイバは住職とミコーに対し、慇懃なアイサツを行う。
「アイエエエエ!?」
「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
住職とミコーは、ニンジャ・リアリティ・ショックを発症し、絶叫。激しく身を震わせながら、凍り付くような恐怖の目をリヴィッドヤイバに向けた。
その怯え様を見たリヴィッドヤイバは、考えを巡らせる。
どうやら、暴力を実行に移さずともそのそぶりを見せるだけで、充分に効果がありそうだ。
暴力をちらつかせるのは粗野と言えば粗野だが、凄みを利かせるのも技量の内。そこいらのサンシタとは訳が違うという事を示す事は出来よう。
リヴィッドヤイバは自惚れの強いニンジャだ。
自身の定義するサンシタとの差異を見出し線引きをする事で、自身がサンシタとは違う存在である事を再定義。モチベーションを取り戻す。
NM 住職にインタビューするにあたって、選択肢は以下の通りだ。
1、2人を拷問する:カラテ判定。簡単だが邪悪。
2、チョップでビール瓶等を切断してみせる:ワザマエ判定。やや難しい。
3、ジツを見せつけさらなるニンジャリアリティショックを与える:ジツがあるニンジャだけが選択可能。
リヴィッドヤイバ ジツは無いし、ここは折角だから高いワザマエを活かそう。
NM 目標値は5だよ。振ってみてくれ。
リヴィッドヤイバ オッケー、行くぞ。[H:22346]おっし、成功だ。
NM お見事。では、リヴィッドヤイバに恐怖した住職は、大人しく従い、マキモノを差し出すだろう。
「アイエエ……! だ、ダメです! 神聖なるレリックを差し上げる訳には……」
恐怖しながらも抗弁を試みる住職に、リヴィッドヤイバは胸中でほくそ笑んだ。
そこいらのサンシタであれば、ここでしびれを切らして殺戮に及ぶ事だろう。だが、自分はサンシタではない。
完全にモチベーションを回復させたリヴィッドヤイバは、更なる脅迫手段に出る。
先程、様子を窺ったとき、確かあの辺りに……。あった。
リヴィッドヤイバはブッダ像まで歩み寄り、その脇に供えてあったもの……。即ち、1本のビール瓶を手に取る。
「なかなか立派な気概だ。では、某から1つ、アドバイスを進ぜよう」
住職とミコーから良く見える様に、腕を突き出してビール瓶を誇示するリヴィッドヤイバ。
もう一方の手で手刀を作り、ゆっくりと振り上げる。
「イヤーッ!」
リヴィッドヤイバの手刀が、ビール瓶など無いかの様に、上から下へと通り抜ける!
勿論、無い訳はない。一瞬後、控えめに床を鳴らす硬い音。そして、垂れ落ちる水音と炭酸の弾ける音。
「……ふむ、まあまあか。如何かな?」
首の切り落とされたビール瓶。その滑らかな切り口を見せ付け、あくまで冷静な声音で、尋ねる。
「アイエエ……アイエエエ……!」
ビール瓶の切り口に自身の未来を幻視したか、ミコーは掠れ声をあげた。
効果有り。ここは駄目押しだ。
リヴィッドヤイバはビール瓶を床に落とすと背後に手をやり、腰背部に差した得物を引き抜いた。
その柄の長さは概ねリヴィッドヤイバの肩幅と片腕を合せた程。その先に、肘から手先までがすっぽり入る程の大振りな三日月形の刃。
片手での扱いを考慮して寸詰めされたショートナギナタ。その切っ先を住職に向け、リヴィッドヤイバは一歩、進み出た。
「もっと滑らかに斬られるのがお望みとあらば……」
ローソクの灯を反射し、粘り付く様なオレンジの光を揺らす刃。その光がジゴク行きのデスゲイズめいて見えたとき、住職の意気は限界に達した。
「アイエエエエエ! わ、分かりました! マキモノは差し上げますから、どうか……!」
ナギナタを向けたまま、リヴィッドヤイバはブッダ像の膝元に軽く視線を投げる。
住職は怯えた様子のままよろよろと歩き、棚に安置されたマキモノを引っ張り出した。
NM 首尾良くマキモノを手に入れたリヴィッドヤイバだが、それとは別に気になるものを見付けた。
本堂内に置かれたデジタル賽銭箱。結構な額の賽銭が記録されており、奪えば纏まった収入になるだろう。勿論、それは邪悪な行為だが。
リヴィッドヤイバ ローンもあるから欲しいと言えば欲しいんだけどなあ……。
良いや。ここまでスマートにやって来たんだから、最後まで通す。デジタル賽銭箱は放置だ。
NM 了解。では、リヴィッドヤイバはターゲットであるマキモノを入手し、任務をやり遂げた。シナリオ終了だ。
「では……オタッシャデー」
リヴィッドヤイバはマキモノを携え、慇懃にオジギを行う。
上体を起こし、オジギを戻したリヴィッドヤイバの視線が、丁度ブッダ像の視線と重なった。
(どうだ。完璧な仕事ぶりであろう)
リヴィッドヤイバは尊大かつ堂々たる態度でブッダを見返す。
マキモノと共に見付けたデジタル賽銭箱は、殊更興味の無いそぶりを見せて放り捨てた。
ローンの事が頭をよぎったりはしたものの、欲を露わにしたサンシタの様な態度は取りたくなかったのだ。
意気消沈する住職、未だ怯えるミコー。そしてブッダの前で、世俗の欲に惑わされぬ英傑を気取る。
リヴィッドヤイバは自惚れの強いニンジャだ。
自身の定義するそこいらとのサンシタとの違いを明確に示し、悠々と退出する。その虚栄心は大いに満ち、気分は良好であった。
NM さて、報酬は万札10。ヒキャクのサイバネ手術に伴うふわふわローンの支払いによって、±0だ。
リヴィッドヤイバ→プレイヤーA まあ、そうなるか。オッケーオッケー。これで安心してこのヒキャクも使えるようになるってもんだからな。
にしてもあっさりしたシナリオだな。ワザマエで2回判定しただけで終わったぞ。
NM DKKを説明する為のシナリオっぽいからねえ。邪悪な行為を重ねてニンジャスレイヤーに遭遇するのがメインイベントなんだろう。
プレイヤーA スマート路線で進めちゃったが、勿体無かったかな?
NM まあ、良いんじゃない? ひとまず、今回はここまでにしようか。有り難うございました。
プレイヤーA 有り難うございました。
PC−A『リヴィッドヤイバ(Livid yaiba)』
カラテ:4 ニューロン:4 ワザマエ:5 ジツ:0
体力:4 精神力:4 脚力:3(4) イニシアチブ:4 回避ダイス:5(6)
サイバネ:ヒキャク(脚力+1、回避ダイス+1個)
所持品:ショートナギナタ(カタナ相当) 万札0
※ノーカラテ・ノーニンジャ適用
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任務を達成し上機嫌で依頼主のヤクザ事務所に帰り着いたリヴィッドヤイバは、入り口のドアノブに手を伸ばし……。何か不穏な予感を覚えた。
あまりにも人の気配がしなさすぎる。
解錠して事務所に入り、急き立てられる様に早足で奥へと進む。
「な……!」
奥の事務室のドアを開けたリヴィッドヤイバはかすかに声を漏らした。
オヤブン、若頭、金庫番、若い衆……。ヤクザクランの構成員が、皆、死んでいる!
「マーベラス。これほど早く帰って来るとは」
部屋の片隅から聞こえた声に目を向ける。そこにあったものは、車椅子。そして、それに座った人物が、ゆっくりと車輪を押し、こちらに近付いて来る。
「大きな騒ぎの様子も聞こえて来ない……見事な仕事ぶりです。リヴィッドヤイバ=サン」
サイバーサングラスで目元を覆い、薄笑いを浮かべる男。彼が何者か、リヴィッドヤイバには知識があった。
「シックスゲイツ……ビホルダー……。ソウカイ・シンジケート……!」
半ば呆然としたリヴィッドヤイバの呟き。
その男……ソウカイ・シックスゲイツの一角である強大なニンジャ、ビホルダーは鷹揚に頷き、合掌。アイサツを行う。
「ドーモ、リヴィッドヤイバ=サン。ビホルダーです」
「……ドーモ、ビホルダ=サン。リヴィッドヤイバです」
アイサツを返すリヴィッドヤイバ。実感の伴わない感覚の中、危機感だけが激しく警鐘を鳴らす。
「そのマキモノは、この様な零細ヤクザクランが望むには過ぎたもの。ラオモト=サンに献上してこそ価値がある」
「ラオモト・カン……」
ソウカイ・シンジケートの頭領の名を、リヴィッドヤイバは鸚鵡返しにした。
裏社会を席巻する強大なヤクザクラン。その幹部級のニンジャ……。抵抗して万に一つも勝ち目は無い……!
リヴィッドヤイバは無言のまま、マキモノを持った手をビホルダーの方に差し出した。
「流石、飲み込みが早い。……しかし、そのマキモノは、あなたがラオモト=サンに献上するのです。リヴィッドヤイバ=サン」
「何……!?」
予想外の返答に、リヴィッドヤイバは呻いた。ソウカイ・シンジケートの目的はこのマキモノ。フリーランスの自分に、何の関係がある……?
「ラオモト=サンとソウカイ・シンジケートに忠誠を誓いなさい。あなたは先んじて功を立てました。歓迎致しましょう」
ビホルダーの弁を反芻し、一呼吸。ようやく、その真意が飲み込めた。
「……そうか、『零細ヤクザクランに横取りされたが何とか取り返しました』では体面が悪いと……グワーッ!」
リヴィッドヤイバは言を遮られ、絶叫! ビホルダーのサイバーサングラスの透過度が上がり、奥の瞳が、リヴィッドヤイバを睨み据えている!
リヴィッドヤイバを拘束する強力なカナシバリ・ジツ! 全ての動きが封じられ、呼吸すらも出来ない!
「ガッ! ゴホッ! ゴボボーッ!」
不意にカナシバリが解かれ、その場に崩れ落ちるリヴィッドヤイバ。空気を求め、激しく咳き込む。
「手練れのあなたらしくもない。言葉には気を付けなければなりませんよ」
その表情と口調はあくまで穏やかであった。しかし、ビホルダーが向けた瞳は、無様な姿を晒すリヴィッドヤイバを見下すものであった。
「……さあ、行きましょう。リヴィッドヤイバ=サン。ラオモト=サンがお待ちです」
ゆっくりと車椅子を進め、事務室を後にするビホルダー。リヴィッドヤイバはよろめきつつ立ち上がり、唯々諾々とそれに付き従った。
家紋タクシーの座席に身を持たれさせ、リヴィッドヤイバは取り留めの無い物思いに耽る。
自分はそこいらのサンシタと自身を区別し、悦に浸っていた。自分とサンシタとでは、高い壁で隔たっているものと考えていた。
しかし、そんなものは。
裏社会を我が物顔で練り歩く強大な力の前では、地面に付いた靴底の溝の跡ほどの意味も無かったのだ。
不意に、テンプルの本堂で見たブッダ像の瞳が、リヴィッドヤイバの脳裏にフラッシュバックする。
そのイメージは、リヴィッドヤイバに対して、インガオホーと告げているかの様だった。
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