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シャドウランリプレイ 影駆ける戦鬼 第2話セッション編



 山間部を走る車道の路肩に停められたトレーラー。その後部座席からドアを開け、車から降りると、両腕を大きく伸ばし、外の空気を吸い込んだ。
「んっ、んんー……。なかなか良いわね。こういうのも」
 雑然と枝を繁らせた樹木と、その間を狭苦しく流れる小川。
 観光雑誌の写真の様に風光明媚とは行かないまでも、都会にいてはお目にかかる機会の無い景色を堪能する。

 彼女の現在の呼び名は『凰雅(オウガ)』。その身を極限までサイバー化し、恐るべき戦闘能力を秘めた『ストリートサムライ』。

「そうですね。空気も良いですし、この辺りは自然の力が強く感じられます」
 後部座席から降りて、凰雅に応えながら後に続く人物が1人。

 ネイティブアメリカンの民族衣装風の天然革の衣服。その上に厚手のアーマージャケットを羽織り、手には木製の杖を持った、奇妙な出で立ち。
 腰に巻いた提げ紐から吊るされた小さな太鼓の位置を直しながら、凰雅の横に立つ。

 彼女の名は『マール』。都市の精霊に通じ、魔法の力を行使する『ストリートシャーマン』である。

「まあ、ここまでは、楽しいドライブって所だ」
 運転席のドアが開く音。景色を眺める凰雅とマールに掛けられる、野太い男の声。

「ここからは、ちょいと険しい所を通る事になる。今の内に充分くつろいでいてくれ」
「ええ。お気遣い有難う。『荷移山(ニイヤマ)』さん」
 凰雅は振り返り、視線を下げて、それに応える。

 低い身長に、黒々とした豊かな毛髪と長髭。幅広な鼻が特徴的な赤ら顔。
 彼はドワーフであった。

「それにしても。こんな山の中に、随分大きくて立派な道路が通っているのね」
 山川の涼しい風に吹かれながら、凰雅は身を翻し、今まで走って来た道路を見渡す。
「そうですね……。荷移山さん、この道路は、そのまま進むとどこに出るんですか?」
 マールは凰雅に相槌を打ち、道路の先を指さしながら、荷移山に尋ねた。
「ああ。この先には、企業が広い土地を使って色々やってる地域と繋がっているんだ。研究プラントやら農場やら、色々な」
 質問に答えながら、荷移山はライターを取り出し、煙草に火を点ける。
「つまりこの道路は、そこと都市部を結ぶ輸送路って事ね」
 そう言えば、自分達の他に見かけた車両は、有名企業のロゴが付いたトラックやトレーラー等の大型車両ばかりだったと、凰雅は思い返した。

「まあ、今回の仕事とは関係ねえ話だがな」
 荷移山はそう言って話題を切ると、手にした煙草を咥え、道路に背を向けた。前方に拡がる山林を見上げ、紫煙を吐き出す。
「俺達が通るのは、こっちだ。その為に、あんた達に仕事を頼んだ」
 緊張感を帯びた真剣な眼差しで、荷移山は行く手を見据えながら、続ける。
「人の手が入らなくなって荒れ放題の場所だ。野犬や熊程度ならまだ良いが……。もっとヤバい化物もいるんだ。いわゆるクリッターって奴がな」
 荷移山に倣い、凰雅とマールも行く手を見上げる。
 目に見える範囲は静かなものだ。しかし、鬱蒼と茂る木々の奥は、全く様子を掴む事が出来ない。
「撥ね飛ばして突っ切る事が出来ればそうするが……車をぶっ壊されかねない大物は始末してもらわなきゃあな。アテにしてるぜ」

 都会を離れて、山の中の道なき道を通り抜けて物資を運ぶトレーラーの護衛。
 それが今回、凰雅とマールが、依頼人である荷移山から請け負った仕事である。



GM(P) 導入はこんな所です。プレイヤーキャラに魔法使いが加わり、メタヒューマンの依頼人から仕事を受けて、クリッターと戦う。
 そんな流れで、魔法の覚醒したシャドウランの世界観を味わって頂こう、というのが、今回のシナリオの趣旨です。

『シャドウラン』は、2011年12月24日に魔法の力が復活し、『覚醒』した世界が舞台となっています。
 世界が『覚醒』した事により魔法使いが誕生し、その他にも様々な変化が現れました。

メタヒューマン:覚醒によって、人間(ホモ・サピエンス)の中に、魔法と共に眠っていた真の姿に立ち返る者達が現れます。

エルフ(ホモ・サピエンス・ノビリス)
ドワーフ(ホモ・サピエンス・ピュミリオニス)
オーク(ホモ・サピエンス・ロブスタス)
トロール(ホモ・サピエンス・インジェンティス)

 の4つの亜種が発生し、これらは『メタヒューマン』と呼ばれる様になりました。
 人間(ホモ・サピエンス・サピエンス)を含め、シャドウランの世界には5種の『人類』が存在します。

クリッター:覚醒によって真の姿を取り戻したのは人間だけではなく、通常の動植物であったものの中にも、奇怪に変貌する物が現れました。
 バジリスク、ハーピー、フェニックス、ナーガ。伝説の中にしか存在しなかった筈の怪物達。これらは『クリッター』と呼ばれます。
 その中には、恐るべき力を持った『ドラゴン』も含まれます。

 メタヒューマンやクリッターなど、覚醒によって発生した種族を纏めて『覚醒種』と呼びます。

マール(まなみ) エルフやドワーフ、それにモンスターですか。いかにもファンタジーな要素が盛り込まれているんですね。

GM そうですね。そこが、『サイバーパンク&ファンタジー』と銘打たれたシャドウラン世界のウリになる所ですから。

凰雅(舞) 全身に機械を埋め込んだ人間が銃を抱えてドラゴン退治、なんて事もあるのかしらね。面白い世界だわ。

GM ストーリー的には有り得なくはないでしょうね。
 さて、何か準備したい事はありますか? 依頼を受けてからで間に合いそうなものなら、事前に準備した事にしますが。

凰雅(舞) そうね……。怪物が出る山の中なら、銃を撃っても警察に捕まったりはしないわよね。ちょっと大きめの銃を買っておこうかしら。

GM 成る程……。(ルールブックをパラパラ)どれにします? ヤバそうだったら止めますから、お好きなのをどうぞ。

凰雅(舞) ふむ……。(GMと相談しながら検討中)
 オッケー。それじゃあ、ショットガンの『ディファイアンスT-250』を買うわよ。
 内部スマートリンクにして、『衝撃パッド』も装備。セミオートで10Sのダメージが反動無しで与えられるのは強いわね。

GM サブマシンガンと比べれば、そりゃもう凶悪の一言ですね。
 ちなみにショットガンは散弾を撃つ事も出来ます。散弾の広がりを調整する機構を『チョーク』と呼ぶんですが。
 価格を上乗せする事で、スマートリンクからチョークを自在に調整する事が出来る様になりますよ。

凰雅(舞) ええ、勿論やっておくわ。あと弾丸だけど、散弾と、単発のスラッグ弾を50発ずつ買っておくわね。

GM はい。銃と補器と弾薬合わせて1,350新円になりますので、所持金から引いておいて下さい。

凰雅(舞) 了解。さて、あなたは何か準備する?

マール(まなみ) 私は……。特にありませんね。……あ! 折角ですから、精霊を呼んで車に《守護(ガード)》のパワーを使って貰いましょう。

GM ふむ。《守護》は、対象を偶発的な事故から守るパワーですね。良い考えだと思いますよ。フォース幾つの精霊を呼びますか?
 おっと。ちなみにここで呼ぶ事の出来る自然精霊は『山岳精霊』です。トーテム修正はありません。

マール(まなみ) では、フォース3の山岳精霊を召喚します。(コロコロ)あっ、3個成功しました。
 ドレイン抵抗は、(コロコロ)5個成功。ダメージはありません。

GM 軽めのフォースを選んだとは言え、出目が良いですね。
 では、物質世界と平行して存在する精神世界『アストラル界』に、山岳精霊が現れます。
 マール自身に助力を使う場合はこのままで良いのですが、他のものに助力を使いたいなら、物質世界の方に出て来て貰う必要があります。

 出発間際、マールはトレーラーに向かい、身振りを交えて呪文を唱え始めた。
 精霊に対する呼び掛けを紡ぎながら、自らの胸元に手を寄せ、忙しなくゴソゴソと動かし始める。

 彼女の正体を知った上でそれを眺めてみると、成る程その動作は、水辺で食べ物を磨くアライグマの仕草の様に見えなくもない。

「……はいっ!」
 最後に一言掛け声を入れて、マールの詠唱が終わる。魔法の使えぬ者達には、特に何か起こったようには見えない。

「突然お呼びして申し訳ございません。お願いがあるのですが、こちら側に来て頂けますか?」

 だが、何の疑問も無く目の前の何も無い空間に微笑みを浮かべて呼び掛けるマールの姿を見て、精霊の召喚に成功したのだという事は分かった。

GM マールの呼び掛けに応え、山岳精霊は物質世界に『実体化』します。……まあ、折角ですから分かり易い姿で出て来ましょうか。

 マールの向いている方に突如現れたのは、ゴツゴツとした石や岩が寄り集まり、人の形をしたものであった。大きさはマールより少し大きいくらいだろうか。

 だが、目に見える大きさはあまり問題ではない。見た目を越えた圧倒的な存在感。山そのものと相対している様な巨大さ。
 魔法使いの素質が無い凰雅と荷移山にも充分に理解出来る。それが物的な理屈で説明し切れぬ魔法世界の存在である事を。

「自然の力の使い手よ、何を求めるや?」
 重々しくも静けさを感じる不思議な声音で、山岳精霊はマールに問い掛けた。

マール(まなみ) ええっと。それじゃあ……。「私達は目的があってそちらの領域を旅しています。旅の安全の為、加護を頂けませんか?」こんな感じでしょうか。

GM オッケーです。「心得た」と一言応え、山岳精霊はトレーラーに《守護》のパワーを使います。
 崖崩れや落石など、偶発的な事故は防ぐ事が出来るでしょう。勿論、意思を持って襲い掛かって来るものは『事故』とは呼びませんからね。

凰雅(舞) 分かってるわよ。それじゃあ、出発と行きましょうか。あ、ショットガンには散弾を詰めておくわね。

 凰雅とマールは後部座席に乗り込み、荷移山も運転席に着く。

 ハンドルの根元から伸びたケーブル。荷移山はそれを手に取り引っ張り出すと、耳の辺りに手を当て、豊かな毛髪を掻き上げた。
 こめかみの辺りにキラリと銀色に光る差込口。手に取ったケーブルを、そこに差し込む。

 突如、荷移山は身体の力を失い、グッタリとシートに身を預けた。エンジンが掛かり、動き出すトレーラー。
 まるで、荷移山が居眠りを始めたと同時に車が勝手に動き出したかの様だ。しかし、凰雅もマールも、それを不審には思わなかった。

 車両と自らを接続し、操縦するサイバーウェア『車両制御リグ』を埋め込んだシャドウランナー。
 運び屋、逃がし屋、非合法取引。卓越した運転技術を活かして仕事をこなす熟練の『リガー』。それが荷移山の、影の世界での姿だ。



GM 準備はオッケーですね。では、休憩を終え、皆さんを乗せたトレーラーが出発しました。
 生い茂る木々の間を、荷移山は走行可能なルートを厳選しながら、巧みに走り抜けて行きます。
 大型のトレーラーが走っているとは思えない程の精密な運転に、熟練のリガーとしての腕前を垣間見る事が出来るでしょう。

凰雅(舞) 流石に、運転の為に身体を改造しているだけはあるわね。
 面白そうだからやってみたいけど、『車両制御リグ』って、『強化反射神経』と同じくらいエッセンスが減るのよね。

GM サムライが個人戦闘のプロであるのと同じく、リガーは車両操縦のプロですからね。まさに同じだけ心身を削っている訳ですから。
 ……さて、山中をスイスイと走っていたトレーラーですが……。運転席にある液晶画面に、荷移山からのメッセージが表示されます。

>>>>>[厄介な奴らが、空からこっちを狙っていやがる]<<<<<

 電子音と共に表示された荷移山のメッセージに、凰雅とマールはそれぞれの武器に手を掛け、窓を開けて空を見上げた。

 そこに見えたもの。それは、獰猛な四足の胴体に大きな翼を生やし、大空を悠々と旋回しながらトレーラーを付け狙う、3体の奇怪な怪物の姿。
「あれは……グリフィン……!」
 マールが声を上げた。

>>>>>[山の中を通る企業のトレーラーが襲われて、積み荷を漁られる事がときどきあるんだ。奴らの仕業さ]<<<<<

「ふうん、成る程……。そういう事ね」
 なぜわざわざ硬い車を標的にするのか。荷移山の説明で、凰雅の疑問は解けた。
 走る鉄の箱を壊すと大量の食糧が手に入る。小賢しい化け物共は、そんな悪知恵を身に付けたのだろう。

>>>>>[ああいう手合いは、近寄る前に狙い撃ちにするのが一番だ。視界の良い場所に停める。そこで迎え撃ってくれ]<<<<<

 ディスプレイに表示される迎撃ポイント。凰雅とマールは周囲を警戒しながら、即座に出られるよう、ドアに手を掛けた。



GM では、戦闘開始です。
 迎撃ポイントに移動したトレーラーから降りると、獅子の身体に鷲の頭と翼を持つクリッター・グリフィンが3体、急降下して襲い掛かろうとしています。
 グリフィンのデータは、ルールブックに書いてある通りです。3体とも、『脅威力』は2とします。

 GMは、NPCやクリッターを登場させる際、コンバットプールの代わりに『脅威力』を設定し、判定処理を簡略化する事が出来ます。
 使用条件はコンバットプールと同じで、攻撃や防御の際、『脅威力』の数値と同じ数だけダイスの数を増やす事が出来ます。
(脅威力のダイスだけで相手の成功数を上回った場合、ダメージを受けず完全回避できる点も、コンバットプールと同様です)

 ただし、コンバットプールと違い、消費や回復はありません。使用可能な場面であれば、常に決められた数だけダイスを増やす事が出来ます。

 脅威力はGMの判断で決定されます。道中の偶発的な遭遇なら低めに、シナリオボスなら高めに(もしくはコンバットプールで処理)すると良いでしょう。

GM 凰雅とマールの方に真っ直ぐ飛んで来るのが2体。距離は28メートルと32メートル。
 それとは別に、迂回して別方向から飛んで来るのが1体。距離は37メートルです。

凰雅(舞) オッケー。イニシアティブからで良いのよね。(コロコロ)調子が悪いわね……。19よ。

マール(まなみ) ダイス3個で9ならまずまずだと思いますけど……。(コロコロ)6です……。私、この戦闘で動けるんでしょうか……?

GM 凰雅のダイス次第ですかねえ……。ではグリフィンですけど、先頭のグリフィンをA、その後ろをB、迂回しているのをCとします。
 イニシアティブは、(コロコロ)グリフィンAが12、Bが7、Cが11です。

凰雅(舞) まあ、やる事は単純ね。距離の近い2体の方から片付ける。ショットガンを構えるわよ。

GM 了解。では、散弾のルールを確認しますか。

 ショットガンは、前方に小弾丸を撒き散らす『散弾』を発射する事が出来ます(単発のスラッグ弾も使用可能で、その場合は通常の射撃戦闘ルールを用います)。

 細かな小弾丸で目標を引き裂く散弾は、防護されていない目標に対して大きな効果があります。
『対弾防御と対衝撃防御が共に0』かつ『皮膚装甲が無い』の条件を満たす場合、目標が『防護されていない』とします)
 防護されていない目標に散弾が命中した場合、ダメージレベルが1段階上昇します。

 反面、防護された目標にはあまり効果が望めません。
 散弾が命中した目標は、『通常の対弾防御』または『対衝撃防御の2倍』のどちらか高い方で、ダメージ抵抗の目標値を減らす事が出来ます。

凰雅(舞) そうすると、『アーマージャケット(5/3)』を着けていたら、対衝撃防御の2倍だから、パワーレベルから6引く事が出来る訳ね。

GM はい。目標値が1違うと、成功数は大きく変わって来ますからね。無視出来ない要素ですよ。

マール(まなみ) 防具を着けている相手には効果が薄い……。今みたいなクリッター退治に使うのが効果的、と言う事でしょうか。

GM そうですね。防護されていない複数の目標を撃退する、まさに今が散弾の活躍どきと言えるでしょう。

 散弾の拡がり具合は、ショットガンの『チョーク』(銃口の絞り)によって決まり、ショットガンの使い手は、チョークを2から10までの値で設定できます。

 散弾の拡散する範囲は、最初が1メートル、それから『チョーク』と同じメートル数飛ぶ毎に、2、4、6、……(以下2メートルずつ拡がる)となります。
 同時に、射撃の成功テストの目標値が1ずつ下がり、ショットガンのパワーレベルが1ずつ減って行きます。
(パワーレベルが0になると、射撃は無効となります)

例:ショットガン『ディファイアンスT-250(ダメージコード:10S)』のチョークを『2』に設定。
 散弾を込めて、『防護されていない目標』に向けて射撃した場合。

目標までの距離散弾の範囲ダメージコード目標値
2mまで 1m10D±0
4mまで 2m9D−1
6mまで 4m8D−2
8mまで 6m7D−3
10mまで 8m6D−4

 散弾を用いて射撃を行う場合、精密な射撃が出来ない為、スマートリンクによる目標値の修正が1減少します。
(サイバーウェアのスマートリンクの場合、目標値は−2ではなく−1になります)

 なお、ショットガンの本体価格の10%を値段に上乗せする事で、チョークをスマートリンクで自在に調整する事が出来る様になります。
(前述の通り、凰雅の持つ『ディファイアンスT-250』はそういう仕様になっています)

凰雅(舞) 散弾が拡がれば拡がる程、命中し易くなって、広い範囲を一網打尽に出来るのね。

マール(まなみ) でも、『スマートリンク』の効果が減っちゃうんですね。目標値で言えば、2段階以上範囲を拡げないと命中し易くはなりません。

凰雅(舞) その分、パワーレベルは下がっちゃうって訳ね。
 成る程。ルールブックに『散弾は2050年の防具技術の前にはあまり効果がありません』と書いてある意味が何となく分かったわ。

GM 散弾が拡がって威力が落ちる上に、防具の効果が大きくなりますからね。
 さて、凰雅はチョーク幾つでショットガンを撃ちますか? 2体のグリフィンを巻き込む為には、4メートル以上の範囲が必要なものとします。

凰雅(舞) 距離が28メートルと32メートルだったわね。チョークは9にするわ。範囲6メートル、目標値-3で7Dダメージで良いわね。

GM 了解。グリフィンは2体とも遠距離なので目標値6。高速で飛んでいるので『目標が走っている(+2)』を付けます。
 外は明るいので視界は良好。スマートリンクで-1。散弾の拡散で-3。ここまでで目標値は4。
 後ろのグリフィンは、前のグリフィンに隠れているので、『目標の一部が見えない(+4)』が付きます。
 目標値はグリフィンAが4、Bが8です。射撃の成功テストは1回でどうぞ。

凰雅(舞) コンバットプール全開で行くわ。1撃目(ザラザラ)1、3、3、4、4、4、5、5、5。それから13が出たわ。

GM ダイス1個で2連続6の目が出るとは何と豪運な。グリフィンAに7個、Bに1個成功ですね。
 グリフィンは強靭力9。7Dのダメージに抵抗します。脅威力を加えてダイスは、Aが11個。Bが12個です。

マール(まなみ) 何でグリフィンBは抵抗テストのダイスが1多いんですか?

GM 散弾で撃たれた場合、前方に生物や物があると、その数だけダメージ抵抗テストのダイスを増やしてテストが出来るんです。
 グリフィンBの前にはグリフィンAがいるので、ダイスが1個増えるんですよ。
 さて、まずはA。(ザラザラ)2個成功。そしてBは(ザラザラ)3個成功。Aは致命傷を受けて撃墜。Bも重傷を負いました。

凰雅(舞) じゃあ2撃目だけど。致命傷のグリフィンAが落ちたら、Bは見える様にならない?

GM んー。残念ながら、そんな時間は無いものとします。銃弾の効果を確認するよりも早く2回叩き込んでいるものとして下さい。

凰雅(舞) 仕方ないわね。じゃあ残ったコンバットプールを全部使うわ。4足してダイス9個ね。(ザラザラ)む、折角6が2つ出たのに……。1個成功よ。

GM ぐう……。命中するだけでも厳しい。(ザラザラ)1個しか成功しないか……。致命傷ですね。Bも地面に落下します。

凰雅(舞) 散弾じゃなかったら仕留めきれなかったわね。なかなか便利じゃない。

GM 次はフェイズ11でグリフィンC。飛行で35メートル近付き、残り2メートルまで近付きます。

マール(まなみ) 近い方のグリフィンがいなくなったので、迎撃が間に合いますね。

凰雅(舞) ……そうね。折角だから、私は『行動を遅らせる』わ。あなた、魔法で仕留めなさい。仕留め損なったら私が仕留めるわ。心配せずに全力でね。

マール(まなみ) わ、私ですか!? 分かりました。じゃあ、フェイズ6で私の番ですね。《電撃(スパーク)》の呪文を唱えます。

GM 了解。《電撃》は『ダメージを与える操作呪文』で、敵を攻撃するという点では《魔力破》や《理力破》等の戦闘呪文と似ていますが、ルールが違います。

 操作呪文の中には、《電撃(スパーク)》や《火炎噴射(フレイムスローワー)》等、魔法で物理現象を発生させ、敵にダメージを与えるものがあります。

 戦闘呪文が『魔法によって敵を攻撃する』呪文であるのに対し、これらの操作呪文は魔法で発生した『物理現象によって敵を攻撃する』呪文です。
 従って、敵は『魔法に抵抗する』のではなく、『物理的な攻撃を回避する』事になり、射撃戦闘のルールに従ってテストを行います。

 ダメージ抵抗ロールの際にはコンバットプールが使用可能で、成功数が2個上回る毎にダメージが1段階ずつ下がります。
 コンバットプールのダイスのみで魔法使いの成功数を上回れば、攻撃を完全回避する事が出来ます。

凰雅(舞) 銃を撃つのと同じやり方でテストすれば良いって事?

GM そういう事ですね。射撃戦闘と同じ修正が加わりますが、射程距離による修正はありません。視界内にいる目標であれば攻撃する事が出来ます。
 基本の目標値は4で、グリフィンは高速移動中なので+2。目標値6でテストをどうぞ。

マール(まなみ) では、呪物の力を借りて、フォース7で撃ちます。トーテム修正が+2で、合計9個。これにマジックプールを4つ足して、13個のダイスを振ります。
 それでは……。(ザラザラ)2個成功……。最大でも重傷止まりですか。1撃では倒せませんね。

GM そうなりますね。では、抵抗してみましょう。(ザラザラ)3個成功。ダメージは下げられませんでしたか。そのままMダメージ。軽傷を負いました。
 では、マールはドレイン抵抗をどうぞ。元々のフォースは6ですから、4Mの精神ダメージに抵抗して下さい。

マール(まなみ) はい。マジックプールから残りの2個を使います。(ザラザラ)5個成功。ダメージ無しです。
 すみません。仕留められませんでした。苦手でも《魔力破》の方が良かったかも知れませんね。

凰雅(舞) ダメージを負わせただけ上出来よ。あとは任せなさい。
 グリフィンが生きているのを確認して、遅らせていた行動を取るわ。ショットガンを仕舞って、カタナを準備する。これで行動終了よ。

GM 最後は接近戦闘でカタを付けるつもりですか……。
 ではフェイズ1。グリフィンCの行動。傷を負わされたグリフィンは、激昂してマールに襲い掛かろうとします。

凰雅(舞) 当然『妨害』するわよ。カタナで斬り掛かるわ。

 自分から1メートル以内の場所を敵が通り抜けようとするとき、その敵に接近攻撃を仕掛け、行動を妨害する事が出来ます。
 この行動は、自分のフェイズでの行動には影響がありません。

 防御側(通り抜けようとしている側)のキャラクターは『防御集中』しているものとして、対抗テストを行います。
 接近戦闘の結果、防御側のキャラクターがダメージを受けた場合、行動を妨害された事になり、そこで移動と行動が終了します。

GM グリフィンの攻撃は『9S、長さ1』です。凰雅は目標値4、こちらは負傷があるので目標値6で対抗テストですね。

凰雅(舞) オッケー。ところで、グリフィンの素手戦闘技能って、どこかに書いてあるの?

GM クリッターは反応力を戦闘技能代わりに使います。知能が高く、技能を使うクリッターもいますけどね。
 グリフィンはダイス6個でテストですね。防御集中なので、脅威力は足しません。では、そちらからどうぞ。

凰雅(舞) コンバットプールは回復してるから全力で行くわよ。(ザラザラ)まあまあかしら? 6個成功。

GM こちらは(コロコロ)1個成功。カタナのダメージが2段階上昇して、10Dのダメージに抵抗ですね。
 重傷で済めば、まだ一応動けるのですが。(ザラザラ)1個成功。駄目か……。ダメージは減りませんでした。
 グリフィンは致命傷を負って地面に激突。そのまま動かなくなりました。戦闘終了です。

 山中に響く2つの轟音。凰雅が持つショットガンの銃声を聞きながら、マールは身振りを交えて呪文を唱え始めた。
 両手を胸元でゴソゴソと動かし、意識を集中させ、魔法の構成を編み上げる。

 今、この様子をアストラル空間から観察すれば、目にする事が出来ただろう。
 極彩色の渦の形を取り、マールの手元に集まり収束して行く魔法の力の奔流が。

 マールは迫り来るグリフィンに向けて、杖を持った手を突き付けた。そして、もう一方の手で、腰に提げた太鼓を軽く叩く。
 火花の飛び散る耳障りな音。
 魔法の力が、マールの手によって電気エネルギーの姿を纏い、物質世界に『実体化』した。

 マールは慎重に狙いを定め、目前まで迫らんとする化け物に向け、真っ直ぐに魔法を解き放つ。

 周囲を震わせ木霊する甲高い雷鳴。

 魔法で作られた稲光に撃たれ、苦悶の声を上げながらも攻撃態勢を崩さないグリフィン。
 怒り狂い、鋭い鉤爪と嘴を以て襲い掛かる化け物を目の前にして、自らの魔法が死を与えるには至らなかった事を認識したマール。

 だが、そこに焦りや恐怖は無かった。

 閃く白銀の光。グリフィンの断末魔の声。

 力を失って飛び込んでくるグリフィンの遺体をサッと躱すと、マールは振り返って微笑みを浮かべ、声を掛けた。
「有難うございます。凰雅さん」
「ええ。何とも無さそうね」
 そこには、刃から化物の鮮血を垂らすカタナを手に、こちらに笑みを返す相棒の姿があった。

「流石に良い腕じゃないか。さあ、早く乗ってくれ。すぐに離れるぞ」
 運転席から手招きする荷移山に従い、2人はトレーラーに乗り込む。そして、一行は移動を再開した。

GM ……あ、そう言えば、グリフィンがダメージを受けたときの転倒判定、忘れてましたね。

凰雅(舞) あー。まあ、要らなかったんじゃない? 結果は変わらずでしょ。

マール(まなみ) 高い所から襲い掛かって来ていた訳ですし、バランスを崩して落ちても位置関係は変わらないですよね。

GM ……それもそうですね。転倒判定に失敗したとしても、それだけで地面まで落ちるのは変ですし。
 ではお言葉に甘えて、気にしないで進めましょう。



GM では、襲い掛かるグリフィンを退け、移動を再開した一行。
 その後も、奇怪なクリッターを車窓から眺めたりはしましたが、トレーラーに差し迫った危機をもたらす存在に遭遇する事は無く、安全に山を抜ける事に成功します。
 そして、山を抜けるときに、アストラル空間にいた山岳精霊がマールに声をかけます。「ここから先は我が領域の外。我が力を及ぼす事は出来ぬ」

マール(まなみ) ここまで付いて来てくれていたんですね。「では、私達はこれで失礼させて頂きます。お世話になりました」と返事します。

GM 山岳精霊は領域の境界で留まり、マールが完全に領域の外に出た事を確認して、元の世界に帰って行きました。
 それからしばらく、道の無い草むらを掻き分け、トレーラーは進みます。

 山を越えて草原を走るトレーラー。凰雅は、何とは無しに車の窓から変化に乏しい景色を眺める。
 ふと、地面に目をやると、あちこちに剥き出しの土が目に付く事に気付いた。草が筋状に剥ぎ取られたかの様な痕跡。それが車のタイヤの跡であろう事は、容易に想像がついた。
 あちこちに散らばった痕跡は、縒り合される様に収束して行き、やがて1本の土の道となって、まっすぐ前方へと続く。

 辺鄙な山奥の、そのまた向こう。こんな場所に、道が出来る程の頻繁な車の出入りが?

 訝しむ凰雅。運転席のディスプレイが電子音と共にメッセージを表示する。
>>>>>[お疲れさん。到着だ]<<<<<
 前方を見やる。視界の先には、まばらな建物が幾つか。そして、よく見ると、歩いている人らしきものが確認出来た。

GM トレーラーが近付く毎に、視界に入る建物の数が少しずつ増えて行きます。そして、それらに囲まれた広い空地のような場所に、トレーラーは停車しました。
 荷移山はこめかみからケーブルを外し、運転席のドアを開けます。トレーラーから降りた荷移山に周囲の人々が近付いて来るわけですが……。

 集まって来た人々が、荷移山と親しげに挨拶を交わし、談笑する。
 その様子を見てまず1つ分かる事は、人々は、この場所で生活している住人の様だという事。
 そして、もう1つ。その殆どが、いわゆる『普通の人間』以外の人類。すなわち、メタヒューマンであるという事だ。

GM 集まってきた住人の内、半数以上がオークで、それからトロール、ドワーフの順で多く見受けられます。
 人間もそれなりにいるようですが、エルフはあまりいないようです。

マール(まなみ) 様子を見てみますけど、こちらを警戒したりする様子は……?

GM まあ、あまり余所の人を見る事は無い様で、もの珍しげに目を向ける人はいます。ただ、敵意やそれに類するものは感じられません。

凰雅(舞) ふむ……。殊更に警戒されている様子が無いなら、私達も車を降りましょうか。

GM では、車を降りた凰雅達と軽く挨拶を済ませると、人々は、荷移山が開けたコンテナから荷物を降ろし始めます。

 コンテナから次々に荷物が下ろされ、人々はその箱を開け、品物を改めて行く。
 日用品や調味料、工具に農具。数段階前の機種のパソコン。雑多な銘柄の酒にタバコ。ちょっと前に流行った、ドラマやアニメのビデオチップ。
 生活必需品から嗜好品、ちょっとした娯楽品まで。品物を確認する度に、人々からどよめきや歓声が上がった。

「ちょっと意外だったわ」
 歓喜にざわつく集落の様子を見回し、凰雅は視線を下げて、荷移山の方に目を向けた。
「凄腕の運び屋がこんな人里離れた場所まで来て、どんなヤバい仕事かと思ってたんだけど。気合を入れて武器を新調したのに、拍子抜けね」
「撃ったじゃないか。まだ足りないってのか」
 荷移山は呆れ声で応え、肩を竦めた。そして、続ける。

「……ここは、俺の故郷だ」

「故郷? あなた、この村の出身?」
 凰雅の質問に、荷移山は、ふっ、と微かに息を漏らした。恐らく、その豊かな髭の奥で微苦笑を浮かべたのだろう。

「村って呼ぶのも変だな……。ここは行政区域じゃない。公式には存在しない場所だ。
 表の社会からあぶれて行き場を無くした奴等が寄り集まって、どうにか暮らしている」

「ああ……。そういう、事なんですね……」
 重い口調で、相槌を打つマール。ここの住民の大部分がメタヒューマンである理由を、理解する。
「……メタヒューマンは、まともな暮らしをするのが難しいからな」
 マールが口にするのを憚った事を、荷移山が口にする、その声は平坦で、感情を読み取らせない。

 メタヒューマンに対する差別。それは当初、世界の覚醒に対する人々の驚きと恐れに結び付き、流血を伴う激しい恐慌として表れた。
 覚醒から数十年を経た現在でも、その遺恨は根強く残り、社会に暗い影を落としている。

 社会の中で冷遇されながら生きるか。この集落の人達の様に、行政の加護を離れ、棄てられた土地で隠れ住むか。
 或いは……荷移山の様に、裏社会の住人として非合法な活動に身を置くか。
 メタヒューマンの生き方は、あまり多彩とは言えない。

「……さて、帰りの積み荷を確認しなきゃならんな。付いて来てくれ」
 凰雅とマールに向けて荷移山は軽く手招きし、歩き始める。2人はそれに従い、トレーラーを後にした。



 という所で、一旦区切りにしましょう。メタヒューマンの集落に荷物を届けた所で、セッション終了です。

 変な所で切ったわね……。

 すみませんね。シャドウランの世界や魔法、メタヒューマンに関して解説を入れると思ったより長くなっちゃって。

まなみ それは仕方ありませんね……。ルールブックにある魔法のルール、まだ使ってない事がいっぱい書いてありますからね。

 ええ。次回はその辺りを、具体的に言うと、今回もちらほらと単語だけ出て来た『アストラル界』についての解説を入れながらセッションして行く予定です。
 舞さんの凰雅もまだまだ撃ち足りないでしょうし、折角ですからもうちょっとガッツリした戦闘をやってみたいと思います。

 成る程ね。そういう事なら、楽しみにしていようじゃない。

 さて、今回の依頼は往復分なので、報酬は次のセッションが終わった後です。カルマの処理だけ行いましょう。
 生存で1点、途中でクリッターを倒し、トレーラーを村まで護衛したので2点。合計3点が、お2人に共通のカルマです。

まなみ 依頼が途中なのにカルマを貰って良いんですか?

 セッションとしては成功で終了しましたからね。
 そして、2人ともランナーのコンビとして巧く演じて頂いたので、それぞれ1点。加えて、マールは今回魔法のルールを覚えて実践して頂いたので、更に1点。
 全部で、凰雅に4点、マールに5点のカルマを進呈します。

まなみ えっ? 良いんですか、1点余計に貰っちゃって……。

 事前にテストプレイもして貰いましたしね。

 なかなか気前が良いじゃないの。さて、4点だと何ができるかしら……?

 あ。ちょっと待って下さい。プレイヤーキャラクターが得たカルマは、9割がグッドカルマ、1割がカルマプールに割り振られます。
 凰雅はカルマが10点目になりますので、その分はカルマプールに足して下さい。グッドカルマに3点、カルマプールに1点となります。

 という事は、カルマプールが2点になるのね。同じシーン中で、2つのテストを振り直し出来るって事で良いの?

 そういう事になりますね。

 それはそれで有り難いわね。前回もカルマプールが無かったら怪我して危なかったもの。
 ……ま、3点じゃ伸ばせるものは無いわね。残しておきましょう。

まなみ 私は敏捷力を4にします。これで反応力も4になりますね。

 はい。了解しました。では、ルール解説しながらのゆっくりしたセッションとなりますが、もうしばらくお付き合い下さい。では、お疲れ様でした。

まなみ お疲れ様でした。魔法使いはルールが多くて大変ですけど、色々やってみたくなりますね。

 お疲れ様。次回も暴れさせて貰うわよ。

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